「賭けの条件だけど」
先輩はベンチに座ると、一呼吸置いてゆっくりと口を開いた。
「側で応援してほしい。支えてほしいんだ」
そして遠くの方を見つめながら、言葉を紡いでいく。
「俺、ずっと逃げてた。仲間を信じる事が怖かったんだ。信じても裏切られる、ならいっその事誰とも関わらなければいいと思った」
先輩はそこで話すのを一旦止めて、息を吐いた。
「だけど球技大会の数日前、ここで西原さんに逃げてるだけだって…先輩には仲間がいるって言われて目が覚めた。小野田も萩原も恭介もチビ達も、西原さんも…俺にはこんなに仲間がいんのにな。何を怖がってたんだろうって…」
先輩の声が少し震えているような気がした。
あの日、先輩が流した涙は迷いも不安もなくなって濁りもなく、透明で綺麗だった。

