恭介は優しい目で私の言葉を待っていてくれる。
私は涙をぐっと飲み込んで、しっかり恭介の目を見て言った。
「好きな人がいるの…だから、恭介の気持ちには応えられない」
私と恭介の間に静寂な空気が漂う。
何処からか虫の鳴き声が聞こえた。
先に口を開いたのは恭介だった。
「知ってる。先輩のことどのぐらい好きなのかも…ずっと見てきたから」
「恭介…」
「正直、先輩が県外に行って安心したんだ。葵を取られなくてすむって…こっちに戻ってきた先輩を見た時も今の先輩なら大丈夫だって思った」
恭介は私から視線を逸らし、遥か遠くの空を見つめた。

