一旦那奈と別れた私は、今朝見上げた桜の下に来ていた。


校門を入ってすぐ右側に広がる庭。

数本の大きな桜の木が並び、木陰に木製のベンチが配置されている。

他にも、校舎に沿うようにある花壇にはチューリップやパンジーが植えられ、賑わいをみせていた。


「良かった。ベンチ空いてる」


ベンチには桜の花びらが散り、まるでピンクの模様を描いてるようだった。


私は軽く花びらを払うと、ベンチに座り空を見上げた。


12時10分。

この時間の空は朝より一層青さを増している。

その青い空を背景に見る桜はなんて贅沢なんだろう。

今年は寒さが長引いて開花が遅れ、ちょうど今満開に咲いている。


部活以外の生徒は下校し、校庭と体育館は校舎挟んで反対側にあるため部活の音や声は聞こえない。

聞こえるのは吹奏楽部のトランペットやフルートの音色だけ。