「那奈?大丈夫?」

「慎ちゃん…」


那奈は若い男性…出席簿を持っていたから恐らく先生だろうか。

その人の消えた方をボーッと見つめたまま私の声が全く届いていないようだった。


慎ちゃんって、知り合いなのかな。

那奈の目は切なげに揺れている。


「おーい!那ー奈!!」


さっきの先生のことは気になったけど、それよりも那奈が怪我してないかの方が心配。

私はぼーっとしてる那奈の視界いっぱいに手を振ってみせた。


「うわ!…あっ、ごめん」

「大丈夫?怪我ない?」

「うん、大丈夫。この通り!心配掛けてごめんね」


そう言って、くるっと一回転する那奈。


「もう、ホント焦ったよー。怪我しなくて良かった」


私は落ちた那奈の鞄を拾い、埃を祓って渡した。