「 慎ちゃん…あの時はありがとね」
「あの時って那奈がアスレチックの下で雷が怖くて泣いてたあの日のこと?」
「うん。今思い出してたの。昔も慎ちゃんにこうやって抱き締めてもらったことあったなって。まだお礼言ってなかったから」
「俺も思い出してたよ。あの日、おばさんからまだ帰ってこないって聞いて飛び出したんだ。那奈は雷が嫌いだからきっと泣いてると思って。ホント無事で良かったよ」
慎ちゃんが覚えてくれてて、しかも同じ時に同じ日の事を思い出していた事が単純に嬉しかった。
慎ちゃんはまだ腕の中にいる私をゆっくりと離し微笑んだ。
「卒業まで長い…待てるか?」
「もちろん!慎ちゃんが引っ越してから今まで再会出来る日をずっと待ってたんだよ。2年半ぐらい待てるよ。それに今度は離れ離れじゃない。慎ちゃんが近くにいるんだもん」
「そうだな。那奈は強くなったな」
「私は弱っちいよ…」
一人じゃ何も出来ない。
今回、こうして慎ちゃんと話す決意が出来たのだって葵のお陰で。
そもそも葵がいなかったら、慎ちゃんがここの先生だって知っても、忘れられてるんじゃないかって怖くてどうすることも出来なかったと思う。
全部、葵が私の背中を押してくれたから頑張れたんだ。
「大丈夫。那奈は一人じゃないから」
慎ちゃんは葵を見ながら言った。

