さくら色 〜好きです、先輩〜


「俺は…そんなんじゃなねぇよ」

「いいえ!先輩がならないで誰がなるんですか!こんなに上手いのに勿体無いですよ」

「俺はこのままでいい。あいつらにサッカー教えて、一緒に出来ればそれで…」


私は先輩が自分の力でさえも信じれなくなっているように思えてならなかった。

それがどうしようもなく悲しくて胸が痛む。


「先輩は過去の事から逃げてるだけです。ずっとそうやって人を疑って生きていくんですか?そんな人生、辛いだけです」

「…っ、誰にも俺の気持ちなんかわかんねぇよ!!」


先輩は股に肘を付き、頭を抱えた。

少しだけ…その手が震えている。


「…わからないですよ…そんなのわかりたくもありません…」


視界がじんわりと滲んでいく。

だけどここで泣くのは違う気がして、私は涙が零れないように空を見上げた。


空には三羽の鳥が仲良さげに飛んでいる。

まるで私と里美と恭介のように寄り添って。