「西原さん?ぼーっとしてるけど具合でも悪い?」
先輩は少し屈んで私の顔を覗き込んだ。
手を伸ばせば触れられる距離。
心臓がどんどん加速してるのがわかる。
こんなに近いと私の心臓の音が先輩に聞こえちゃいそうで…
「…す、すみません。大丈夫です」
その距離感に耐えきれなくなった私は、そう言いながらふいっと顔を逸らした。
あ…きっと…ううん、絶対。
今の感じ悪い…
先輩の反応が気になってちらっと盗み見たけど、先輩は「具合悪かったら言えよ」と私の頭に手をポンッと置いて、全く気にしてないようだった。
先輩にとって私はただの後輩だってわかってる。
…わかってるのに、そんな優しい笑顔向けられたら期待しちゃうよ。
私は先輩の背中を見つめながら、一歩後ろを歩いた。
迚もじゃないけど隣を歩けなかった。

