「俺じゃなくても恭介とかいるじゃん」
吐き捨てるようにそう言われ、一瞬にして心が折れる。
先輩の言う通り。
同じクラスの仲間なんだし、幼馴染なんだし。
わざわざ先輩に頼まなくても恭介に教えてもらえば済むことなんだけど…
「それでも先輩がいいんです!!」
先輩に教えてほしい。
先輩がサッカー部に戻る近道になるかもしれないっていうのもあるけど…
でも一番の理由は、私が先輩といたいから。
私の声が静まり返った広場に響いた。
先輩の答えを聞くのが怖くて、目をギュッと瞑りながら次の言葉を待つ。
すると、
「ぷっ!ハハハッ!!」
「せ、んぱい?」
吹き出すように笑い出した先輩は、苦しそうにお腹を抱えている。
やがて笑いが収まったのか、目尻を人差し指で拭いながら言った。
「西原さんって本当に素直だな」
「え?」
私は自分が言った事を頭に浮かべると、一気に顔を赤くした。
やだ、私ったら…何言ってんだろ…
先輩がいいだなんて、まるで告白みたいじゃん…
「あ、あの…これは違くて…」
慌てて弁解しようと先輩を見ると、先輩はまたお腹を抱えて笑っていた。

