弓道場の外から不意に、突然現れた彼が話しかけてきた。
「うん。そう。」
「朝練とか努力家だねー。さすが副委員長」
そう。私、黒咲 依紗那(こくしょう いさな)は副学級委員長をやらされている。なかなか決まらずくじ引きが行われ、ものの見事に当たってしまった。
ちなみに彼、一条 暁(いちじょう さとる)は同じクラスで学級委員長。社交的で優しく、面倒見もよく、さらには顔も成績も良いため、学園内の人気者の中の一人らしい。本人には自覚がないらしいが。
その性格のおかげか、それとも私が副委員長だからか判らないが、口数の少ない私にも話しかけてくる。今のように。
「習慣のようなものだから。」
「へぇー毎日やってんのか。大変じゃね?」
「別に。暁君何しにきたの?」
「ん?特に意味はないかなー。学校に早くきてやることなかったから散歩してたら、音が聞こえて気になってねー」
「そうなんだ。」
朝早くきたからって、校庭の散歩をする人は初めて見たよ。しかも校舎から弓道場までは結構距離があり、用がある以外に行こうとする人はいないだろう。本当に彼は暇だったんだなぁ。
