武市さんの声に耳をピクリとうさぎのように反応させ、目を開けると。
膝を抱えてわたしの前に座って、上からわたしを少し困ったような瞳で見つめる武市さんの姿があった。
「――わざわざ……起こしに来てくれたんですか?」
ぼんやりとする頭の中。
武市さんがわたしを起こすなんて幼い時以来?でもなんで……。
視線を周りに移すと、見慣れない風景。
知らない部屋にわたしと武市さんだけがポツンと居座っている。
嗚呼、そうか。
寝ぼけていた頭がやっと機能し始め、昨日から武市さんとここに住んでいるのだとようやく思い出した。
「思い出したような顔してるね、よかった。さて、もう朝餉はできてるから可愛い寝癖直して早くおいで」
武市さんはわたしの髪の毛をひとすくいして、ははっと優しく微笑んだ。
恥ずかしくてすぐに武市さんの手をはらいのけて、目を細くして笑う彼の長い綺麗な髪の毛を仕返しするようにひとすくいして、冗談交じりな口調でこう言った。
「武市さんもここはねてますよーだっ」
するといきなり武市さんはひとすくいしたわたしの手に自分の手のひらを重ねた。
