後少しで夢落ちする寸前。
手にほっと暖かい物が触れた。
わたしの重たい瞼はその正体をたしかめるために開くこともなく、ただ瞑ったままだった。
「――手、冷たい。風邪引くよ?」
誰かが言い放った、その言葉の後に何か羽織のような物が肩にかけられる感触がした。
そっと目を開けると、目の前にぼんやりと武市さんの顔があった。
「……目の焦点が合ってないみたいだね。ほーら、起きて」
ポンポンと肩を叩かれ、目をこすりながら武市さんを見上げた。
武市さんはやれやれといった表情でわたしを見下ろしている。
でも、その顔は優しくて。わたしは甘えるように手をそっと伸ばす。
「……しかたないなぁ。とみって本当こういう時甘え上手だよね」
