わたしは彼をひたすらあきらめなければいけない。
句を詠んだらほんの少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
そろそろ武市さんもこの家に帰ってくるはず。
起きて彼の帰りを待たなくてはいけないのに、なぜか体がその場かた立ち上がろうとしなかった。
柱にもたれかかったまま、重い瞼を閉じた。
……このままでは寝てしまう。
そう思ったけれど、瞼は一向に開いてくれなくて。
わたしはその場でついうたたねをしてしまうのであった。
夜の風がわたしの髪をさわさわと揺らす。
ザァと木の草がこすれ合う音しかしないこの場所は、先ほどまでの宴会のガヤガヤした音とはかけ離れていて、とても心地よかった。
