一枝の寒梅







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婚礼の儀式の後、龍馬さん達も酒を交わし合いただの飲み会の宴になった会場。




龍馬さんやその友人の中岡慎太郎、武市さんの弟子である岡田以蔵の三人は顔が真っ赤になるまで飲んでいて、夜中に武市さんが手を貸しながら、やっとのことでそれぞれの家の帰路をたどった。




わたしは今日から武市さんの親が用意してくれた一軒家に一足早く向かい、武市さんの帰りをひとり縁側に座って待っていた。



用意された一軒家は武市さんが幼少時代住んでいた家で古びた廊下はところどころ木が剥げていて、誰かが住んでいたことを物語っている。


家の中でも特に木がすり減っている柱からは、小さい頃武市さんが落書きしたのであろうか。



『博識になるんだ』

『修行あるのみ』


と、今はもう薄くなった墨で書かれていた。


わたしはその落書きを見て、口元を押さえてくすっと笑ってしまった。


決して馬鹿にして笑ったのではない。


ただ、小さい頃の武市さんがこんなことを柱に書いてしまうなんてなんだか少し可愛らしいと思ってしまったのだ。


一通りいたるところに書いてあった落書きを読んで、あまりに可愛いものばかりなため、自然と何度も顔がほころんでいた。