小さなメモ用紙に
私は自分の名前を書いた。

あなたの前で私がこのメモを見せたら、
そこから始まるね。


一生懸命勉強してくれたんだね、手話。

二人で話そう。
いっぱい話そう。

手が疲れるくらいに
いっぱい話そう。

ほかのひとには聞こえないから。


反対側のホームにいても二人が見えてる間は、
ずっと話をしようね。


< 美渚、
ボクはキミが大好きだよ。>


ずっとぎこちなかった
あなたの手がいっぱいいっぱい練習してくれたんだね。
スラスラと話してくれる。

私を好きになってくれる人なんていないと思っていたから、
歩翔くんがウソをついているようにしか思えなかった。


< 信じてくれないの? >


< 美渚、ボクはキミの心が大好きなんだ。
聞こえないことを気にしてるの?
でも美渚が聞こえないから、
ボクと出会えたんだよ。 >


< いっぱい、
あなたのこと教えて。
いっぱい、
私のことも聞いて。
私もあなたのことを
今以上に好きになりたいもん。 >


< ボクのこと好き? >


< 大好き! >


見えなくなるまで、
いっぱい話そう。

二人にしかできない
まわりに人がいても二人きりの会話。



今日もキヨスクの前
あなたと私
離れていても二人だけの合図ではじまるね。


< 美渚、おまたせ。 >





end