息を無くした天使は叫ぶ


始まりはきっと突然なんだ…。
突然始まって、突然消えてしまう。



「水瀬さぁんっ」
甲高い笑い声、あたしの前に置かれるゴミ「ちょっと!あんた聞いてんの?あたしが話しかけてあげてるのに無視ですかー?」どこからかクスクス笑う声に耳をふさぐ。「あんた何様のつもりなんだよ!あんたの為にゴミおいてあげたんでしょーが!ありがたく思いなさいよ!」
「ご…ごめんな…さ…い。」
こんなこと日常茶飯事。もう慣れた、怖くもない、聞かなければいい、相手にしなければいい。
自分でも分かってる。分かってるけど、1人でも良いから…あたしの事をわかってくれる人がいたなら…。そんなことあるはずがないけど、あたし…変われてたのかな…?でも、あたしには相談できる親さえいないから…、無理だろうな…。
「やめなよ!」
男の子の声がした。
ビックリして振り返ってみると、そこには髪は綺麗なブラウン色をしていて、目がパッチリしている見知らぬ男の子が立っていた。
「なんで?別にこんなやつ助けなくていいじゃん」
椅子に座って下を向いているあたしに言った。きっと、冷たい目だったんだろう。
「言い分けないだろ?」
「はぁ?意味わかんないし、大体なんで祐里がこいつを助けるわけ?こんなやつゴミ以下じゃん!」
突き刺さるような言葉、瞳からは今にも溢れだしそうな涙、あたしは今までひどいことされても我慢してきた。だけどなぜだろう?涙が止まらない。瞳から溢れ出した涙が頬を伝って床に落ちた。
あたしは涙を見られないように、教室を飛び出した。
「あっ!待って!」
「ちょっとどこ行くのよ!」
同時に2人の声が聞こえた。
こぼれ落ちる涙を拭きながら必死に走った。ただひたすらと。屋上へ続く階段を上って、鍵のかかっている扉を開けて屋上へ入った。
雲1つない空を見上げて、涙が止まるのをまった。何時間だったんだろう?ふと視線を屋上の入り口扉に目をやると、さっきの男の子が立っていた。
「もう、大丈夫?」
その男の子はあたしに言った。あたしは静かに頷いて。
「なんで、あたしなんかを助けたの?」
そうすると男の子は困ったような顔をして、
「なんか、助けてあげたくなった。1人にしないでって顔してた。助けてほしいって顔してた。だから、俺たすけたくなったんだ!」
大きな瞳であたしを見る男の子。目が離せなくなる。少しずつ彼が近付いてきた。
「俺は、長谷川祐里です。よろしく。」