咲子と沙羅とマリアは留守番をし、姫野、クーニャとも道の途中で別れた。


アゲハ、華乃、朱鳥、そして幸大が無言で歩く。


「あの…」

朱鳥が言う。

「ん?」

「ありがと…」

朱鳥が小さな声で言う。

「感謝される理由はない。」

幸大が言う。

「制服を乾かしてもらったし、服も借りたし、雨宿りもさせてもらったわ。」

朱鳥が言う。

「それならば私も礼を言わねばな。」

華乃が言う。

「いや…アゲハと冬木は雨の中わざわざ俺を探すために濡れたんだから感謝するのは俺の方だ。」

幸大が言う。

「幸大様に感謝されるなんて…

私は幸大様のためなら命さえも捧げれます。」

アゲハが言う。


「それから…ごめんなさい。」

朱鳥が呟く。

「は?」

幸大が言う。

「あんたを悪人呼ばわりしたこと。

あんたは私が思ってるよりも悪人じゃなかった。」

「そう決めつけるのは早計だろ。」

幸大が言う。

「あんたが悪人じゃなかったって言ってるんだからもっと喜びなさいよ。」

「へいへい…」

「あんたは案外…優しいし良い奴だってのもわかったわ。」

朱鳥が言う。

「惚れたか?」

「な!?

調子に乗んないでよ!!」

朱鳥が声を張り上げる。