その頃…


川沿いの斜面に咲く桜の樹の所へと幸大がやって来た。

斜面であり地面には多少の起伏があるせいか他の花見客はここには陣取らない。


「そこにいるんだろ?」

幸大が桜の樹に身を隠す何者かに言う。

「俺は耳が良いから…逃げるお前の足音くらい聞き分けられる。


お前だろ?

たまに…俺を付け回してたストーカーは。」

返事がない。



「いつぞやは靴を磨いてくれたんだよな?

サンキュー。」


ザァーッ!

強めの風が吹く。

流される桜の花びらと共に多少ゴシックな雰囲気のある黒い服を着た少女が桜の樹の横に立つ。


「あれ?

お前…」

幸大が言う。

「覚えてて…くれたの?」

少女が言う。

「クリスマスにマフラーをプレゼントした佐藤の彼女だろ?」

「あの男の彼女…ではないわ。


あの男とは午前に待ち合わせをしたのにあなたがマフラーをくれた時も連絡の一つも無かったもの…

あなたと会ってからすぐに帰宅したわ。」

「そうか…

で、何でストーカーを?」

「私は…あの男につけ込まれて惨めな思いをしたわ…


あなたの周りにいる女の子たち…

彼女たちと一緒にいたらあなたも傷つくかもしれない…


だから…私が守ってあげるわ…

あなたは…私が…うふふふ…」