土曜日

まだ空が暗さを帯びた早朝




「ぐー…」

幸大に背負われて寝息を立てるマリア。

「ったく…

吸血鬼は夜行性じゃねぇのかよ…」

幸大が言う。

「夜行性はコウモリだけだ。

精神体であり肉体のない余は常に起きていられるがな。」

血液で作られた肉体で服を着ることで人間に近い姿を型どるヴァンは荷物を持っていた。

「つーか…その顔、マスクだよな?

みょーにリアルなんだが。」

幸大がヴァンの人間にしか見えないマスクを見て言う。

「ハリウッドとやらの特殊メイクの技師に吸血鬼の知り合いが居てな。

血液で生前の余の顔を作り、それを型にして作ったのだ。」

「じゃあ…それがお前の本当の顔?」


「ああ。

最近の技術は素晴らしいな。

余の顔と寸分違わぬ。


他に体全体のも製作中なのだが今日には間に合わなかった。」

「ヴァン…お前、ダリシスのためだけに?」

「そなたはわかっておらんな。

女性のためだけに全力を尽くさねば男の名が泣くぞ?」

「はいはい…善処する。


ここなんか、良いんじゃないか?」

幸大が桜の樹の真下に立つ。


「ふむ。

川も見えるし…よい。


ではシートを敷く。」