もうひとつの、


「……それは随分と、建布都さんらしい」

舞白が呟くのと、優しい薄紅色が風に乗って舞い上がったのとは殆ど同時。

快晴の空に桜の花びらが散らばる。



(嗚呼、雪みてえだ)



建布都はそっと腕を伸ばすが花びらは指の間を擦り抜け、無骨なその手は空を掴んだ。

妙な虚しさに苛まれて、そのまま再び天を仰ぐ。



「なあ、お前の方こそどうなんだ」

高校生活は充実していたか。

そう続けようとして開きかけた口を、男は一度結んだ。

問わずとも、答えが分かるような気がした。



「……大学部、だっけか? そっちでもしっかりやってけそうか?」

代わりに喉から出たのは、彼女のこれからについて。

こちらも答えは分かっている。

「まあなんとか」

小さく頷く舞白。

「先程小岩井さんへの引き継ぎも終えましたし、いざとなればここには“彼”もいる。気掛かりだった“臥龍”も、どうやら心配なさそうですしね。私は安心して卒業できます」

「……龍太郎はきっと、強くなるだろうよ」

「当然でしょう。丹下君には是非とも次回のトーナメントから食券を手に入れ続けて貰わなければ」

「あ? 食券ってなんの話だ」

「いえ、なんでもありませんよ」

意味深な微笑を浮かべ、舞白も空を見上げる。