もうひとつの、


目蓋を下ろして

「ところで」

少女は尋ねる。

「どうですか、学園生活の方は」

唐突に話題を変えられても特に意に介さず、男は天を仰いで笑った。

「ああ。思った以上に楽しいぜえ? 癖のある奴らばかりでな。多分ここ百年で一番おもしれえ」

日焼けした肌に白い歯がよく映える。



「編入早々、食堂で丹下君と乱闘騒ぎを起こしていましたね」

「なんだ……見てたのか」

「当然でしょう」

こりゃまた敵わねえな、お前には、と肩を竦める建布都。



「乱闘なんて大袈裟なもんじゃねえって。まあ俺も大人気なかったとは思うがな。龍太郎に悪い事しちまった」

視線を下げて苦笑い。

「全く、貴方の負けず嫌いは相変わらずですね」

「“武神”だから、な」

舞白は“相変わらず”の無表情だ。

退紅色を何百倍にも希釈したような、そんな淡い色の唇から溜め息が零れる。

失望と言うよりは呆れに近い溜め息が。



「“能ある鷹は爪を隠す”という諺、ご存知ありませんか」

「そりゃあ知ってるとも」

あからさまな嫌味を言われても、建布都はどこ吹く風でサラリと答える。

「だがな舞白、お前、“宝の持ち腐れ”って言葉も知ってんだろ? 生憎、俺はそっちを大事にしてんのさ」