もうひとつの、


が、この少女は畏縮どころかびくりともしない。

寧ろ“そんな顔してもダメ!”と、モソモソ布団を被り直そうとしていた燕の手から布団を奪い取る。

彼とは十年以上の付き合いなのだ、あんなものにはもう慣れっ子である。



「……何時だと思ってる」

「五時だが?」

「……眠い」

「昔っからだらしない奴だなお前は。まぁ私だって多少は疲れているし眠い。この一週間、時間さえあれば稽古稽古、また稽古だったからな」

「毎朝毎晩その稽古に無理矢理付き合わされる俺の身にもなってみろ」

「仕方ないだろう。私よりずっとずっと強いんだから、お前は。お前以外の誰に、頼れと言うんだ」


後半の、愛の告白にも捉えられかねない発言に、燕は不機嫌そうに目線を逸らした。

何をしている訳でもないのに長く上を向いた睫毛が、影を生む。

猫のような目、鼻筋のスッと通った小顔に華奢な体。

正真正銘女性である雀よりも色が白く艶めかしい彼は、女だと紹介されれば、誰もが信じてしまうだろう。