もうひとつの、


「香水とかで良いんじゃないのお?」

「最初は僕も香水にしようかと思ってたんです。でもよく考えたら、匂いや味ってかなり好みが出るじゃないですか。だからちょっと……」



「バスボムとかお洒落な入浴剤とかは? 女子ってそういうの好きじゃん?」

「消耗品よりは、出来るだけ長く使えるものがいいかな、と」



「えー、田中君のくせに我儘だなあ。じゃあ思い切って、雛菊ちゃんが色白君にあげたみたいに肌着――」

「それだけは絶対あり得ませんっ!」

「アハハハ、冗談だよお」



「……すみません、せっかく提案して貰ってるのに」

申し訳なさそうにもじもじする啓太。



「てか、田中君て確かホワイトデーが誕生日だよね。いっそのこと婚約指輪でも渡しちゃえば? もうちょっとで結婚できる歳になる訳だしい」



一秒と置かずに啓太が顔を上げた。

眼鏡のレンズが曇っているのはレモンティーの湯気のせいか、それとも…。



「なっななな何を言ってるんですかっ!! けけけけっけ結婚だなんて!!」



耳どころか首まで真っ赤に染めて、再び俯いてしまう。

そんな彼に言葉を掛けたのは、先程まで比較的静かに聞いていた万里だった。