と、いつの間にか話が逸れてしまったが。



「――で、話戻すけどさぁ、溜め息なんて吐いちゃってどしたの?何か悩みでもあるとか?」

「マスター、ホット蜂蜜レモンティーください。蜂蜜多めで」

唐突に話題の軌道修正をしたのは千歳。

姉妹揃って啓太の向かいにドカッと座る。

万里に至ってはちゃっかり注文。



啓太は記念すべき本日千回目の溜め息を零した。

かつてこの姉妹の行動が原因で恋人と破局し掛けた事もあったが、なんだかんだで現在啓太は彼女らと仲が良い。

「実は……」

話すべきか一瞬躊躇したものの、このまま一人で悩んでいても埒が明かないのは分かり切っているので、啓太は重い口を開いた。



「実は、ホワイトデーのお返しについて、ちょっと」

「あー、アリスカちゃんへの、ね」



彼女達を含め、バレンタイン、啓太にチョコレートをあげた女子は何人かいる。

勿論義理チョコだが。

が、彼がホワイトデーに関してこれ程頭を悩ますような人物はただ一人。

アリスカしかいない。



「お二人も知っている通り、バレンタインはアリスカさんのお誕生日でもあったんですが……」

「うん」

「……あげられなかったんです、お誕生日プレゼント」



「……はあぁあぁぁあああああ!?」



千歳の絶叫に“不機嫌なマイハニー”の音が掻き消される。

マスター大迷惑。