「なぁにボヤっとしてんのお? 田中くーん」

「なんかあった? 紅茶冷めてる」



ヒールが床を打つコツンという音と共に現れたのは、運勢アンバランス双子、幸多万里と千歳。



万里はエアリーなシフォン素材のシャツワンピースとカーディガンにレースアップブーツ、千歳はロゴパーカにデニム、目が覚めるような赤のラバーソールという出で立ちだ。

ちなみに啓太は万里の格好の方が好みだったりする。



「……偶然ですね、お二人でデートって奴ですか?」

「はあ!? だぁれがこんな馬鹿姉と二人っきりでラブラブデートなんかするもんですかっての」

訊いた途端に千歳が顔を顰め

「……私だって家で寝てたかったのに」

最近になって漸く妹の腹黒さに気付き始めた姉は露骨に眉根を寄せた。

軽くメンチ切り合う二人。



それにしては、万里は随分と服に気合いを入れているように見えるし、ナチュラルながらしっかり化粧もしている。

妹の方も万更でもなさそう。

まったく、仲が良いのやら悪いのやら。



「舞白先輩とかマリー先生とかー、あと後輩何人か呼んで夕方からここで女子会すんの。薊ちゃんも参加してくれるみたいでさあ」

睨み合いを止め、千歳が楽しげに語った。