私の前にいる男、金髪と黒の髪の毛の二人の男。
「おい、なにをしてる」
低音の声で・・・そう彼はささやく。
「君、どうしてこんなところでしゃがんでるの？」
もう一人は、さっきの男より声は少し高くやさしく、甘い声でささやいた。
「おい・・・。おい！！」
私は、顔を上げない。
「君、名前・・・捺[なつ]って言うの？」
それを聞いて私はすばやく顔を上げた。
「どうして・・・？」
すると、やさしい声の主は言う。
「いまどき珍しいね。学生証を持ってる学生」
そういって、フッと笑う。
何がおかしいのだろう。私は、この人生を終わらそうとしているのに・・・
「おい、てめぇ何で轢かれようとした」
柄の悪いほうが言ってくる。
「まぁ、後でいいじゃん。とにかく、家に帰る気はなんだよね・・・？」
そう、私は今に死のうと・・・いや、眠ろうとしていた。家には母も、父も、兄弟も何もいない。母は、看護婦で家を出ている。父も、医者だから同じだ。私にかまってくれない・・・。
「・・・・・・・・・ん」
すると、ひょいっと持ち上げられた。正確にいうと、連れて行かれそうになっている状態。
「なっちゃん、とりあえず車に乗って」
なれなれしく、『なっちゃん』と呼ぶこの男、名前は？と聞こうとした瞬間、何かを嗅がされた。そして、ある場所に着くまで目を覚ますことは無かった・・・・・ー。