私の好きな人には彼女がいる。

「好きだよ。」
いつものように私がつぶやく。
隣で寝ている彼に。
彼、安藤達也(18)は私の好きな人。
でも、彼には彼女がいる。

私、桜井南(16)が彼に出会ったのは半年前。
ちょうど蝉の泣いている頃だった。
某サイトで私達は出会った。
何気ないメールを10通ほどして、家が近いことをきっかけに会おうと言う話しになった。
のり気ではなかったが、彼氏もいない。
会えない理由もない。
特に理由をつけれる様子もなく家の隣の公園で待ち合わせた。
しかし待ち合わせ場所に来た彼は私が知っている人物だった。
高校の先輩。
間違うはずがない。
私の一番嫌いとするタイプの先輩。
でも…。
会うのは1度だけではなくなった。
2度、3度。
積み重なっていった。
そして私は彼に恋をした。

「どうしたんだよ。南」
達也が私の名前を呼ぶと、彼に出会う前の自分が頭を過ぎる。

ヤリマン。
セフレ。

そんな過去が私にはある。
元カレなんて建前。
正確にはセフレ。
誘われたら拒まない。
ヤリマン。
たかが数回やっただけ。

私にはどうしても消せない。
そんな過去を。

「達也〜好き〜。」
「はいはい。」
いつも軽くかわされる。
そして、罪悪感からの達也のキス。
キスは好きな人とするからキスなんだよ?達也。
達也のキスは、彼女がいるからお前とは付き合えないごめんな。
のキス。
わかっているから拒まない。

私は達也と出会ったから変われた。
ヤリマンと呼ばれた私を変えてくれた。

でも達也が私を変えたのは過去の自分を見ているから。

達也も私に出会う前。
私と同じことを繰り返していたらしい。
出会う前と言っても出会う1年程前。
自分が公正できない代わりに私を公正させた。

それが達也の自己満足に繋がっている。

私は達也と出会ってからも数人とキスをしSEXをしていた。
毎回達也に泣いて謝り、言われる言葉もわかってきていた。
「悲劇のヒロインかよ。」
「お前は一生治らない。」
毎回男と会ってその後すぐに思い出す達也の顔は怒って軽蔑してる顔。
だから、すぐに連絡をとって泣きながら謝り理由をこじつけた。
達也が悪い。
同じ理由を。