「 実那、
ホントに行きたいところないの? 」


いつもよりしつこい兄に私はイジワルをしてみたくなった。

わざと兄の車が写っていた雑誌を見せて兄の車を指さして


「 私、この海に行きたい!
ここは遠いの? 」


兄は私から雑誌を受けとり、沈黙のまま見ていた。


「 ここは、オレ行きたくないな。 」


「 そっかぁ、
彼女と行ったところには妹と行きたくないよね。
大切な思い出だもんね。 」


私の言葉を聞いてる間、
兄の寂しそうな顔をみたけど…。
私は言い捨てるようにして車イスを自分の部屋に動かした。

途中から兄が後ろから押しているのがわかったから


「 さわらないで!
自分で出来ることくらい一人でやらせてよ。
私は歩けないよ!
だけど、私を甘やかさないでよ。
一生私のそばにいてくれるわけないでしょ?
だったら、
私にできることは一人でやらせてよ。 」


そうでも言わないと私の心はつぶれそうだった。

兄には私にかまわないで、
彼女と幸せになってほしいもん。

私から離れていってほしい。