あたしが抱きしめてたら彼女の元から戻って来るかも。
触れる面積が増える事で一度諦めた未来が見えるかも。
未練タラタラなあたしは思ってしまった。
だけど、このままじゃいけないって。
愛人願望もないし、あたしが1番じゃなきゃ嫌だ。
分かってる。
分かってるから智幸に伸ばして行き場を失った腕をだらりと下ろしたのに。
変わりに智幸の腕の中に包まれた。
たった数ヵ月なのに、懐かしくて安心する匂い。
きっと2度と包まれる事ないと諦めながら期待した温かさ。
あたしの気持ちを揺るがすには十分過ぎる程、強く抱き締められた。


