ゴクリ。
静かな玄関に生唾を飲む音が聞こえた。
あたしは光が見える奥へと進み、リビングに入ると電気が点いてるだけで何もなかった。
本当に何もない。
だだっ広いリビング。
ソファーもテレビも何も。
家具は一切なく生活感が全くない空間だった。
「ひっ!!」
左からグルリと首を回し閑散とした部屋を見渡すと、僅かに黒い物体が視界の隅に過った。
なになに!?
ここは曰く付きの部屋ですかい!!
リビングを入って右手にはキッチンがある。対面式のオープンキッチン。
キッチンの向こう、リビング側に見える物体。
怖いもの見たさで恐る恐る足を進めると、食べかけのコンビニ弁当の傍らでキッチンに背を預けて座ってる人間が居た。
「智幸。」
ファミレスで見たスーツ姿のまま静かにうつ向いていた。


