「…っ…ぅっ…」
「えっ!?なっ…泣くなよ!」
これは嬉し泣きだもん。
迎えに来てくれて嬉しかった。
やっぱりコイツの傍は安心する。
ずっと傍に居たい…と思ってしまった。
「よしよし」
あたしをすっぽりと包み込んで頭を撫でる光梨。
大きな骨張った手に男を感じて、ドキドキしたのがばれないように光梨の胸に顔を埋めた。
「なっ…で…来てくれたの?」
忙しかったんじゃないの?
めんどくさい女って思った?
光梨はふっ、と笑ってこう言った。
「俺、…王子様だから」
不覚にもその甘い笑顔に酔わされた。
ドキリと鳴った心臓は止まることを知らない。
どんどん加速していく心音に呼吸がしづらくなる。
「……っ…ばーか」
「ははっ!電車の音聞こえたからすぐ分かった」
この近くには線路が通ってる。
でも……
「夢壊すな、バカ」
「じゃあ何て言えば良かったんだよー」
あんたの額には大きな粒になった汗がいくつもあるの、暗くても分かるよ。
すぐ分かったなんて、嘘。
電車の音が聞こえるのなんていっぱいあるもん。
嘘ついてまであたしを気遣かってくれる彼に、言いようのない愛しさを覚えた。
「大丈夫、大丈夫」
「……ふぇ…っ…」
光梨に抱きしめられると安心する。
とてつもなく安心する。
それと同時に、失う不安があたしを埋め尽くす。
ぎゅっ、と強くしがみつく。
離したくないと思った。
光梨は何も聞かなかなかった。
あたしが泣いてる理由も、傷だらけの理由も。
ただ優しく受け止めてくれて、涙を吸い取ってくれる。
それが心地好くて、自分から話したくなった。
こんな感情、初めてだった。


