「ちょっと!」
後ろから先輩に腕を掴まれる。
強く掴まれたため、爪が食い込んで少し顔をしかめた。
「だ〜いじょうぶだって!」
「俺が大丈夫じゃないんだよ」
「は?」
「まだ……
お前と居たい」
…………
……何、言ってんの?
セフレだよ?
そんなことある訳…、ない。
そんな感情、必要ない。
「ありえない」
先輩を冷たい瞳で一瞥し、背を向けた。
もう先輩は何も言わなかった。
何考えてんの?
そういうプレイ要らないから。
先輩の大豪邸から少し離れると、そこは危ないライトがちらつく繁華街。
ホストクラブやキャバクラが山ほどある。
もちろんラブホも。
あたしがよく援交する場所でもある。
そして、この中のどこかで母親が働いている。
…体を売っている。
昔は……あんなふうになりたくないって思ってたのになあ…
あたしも同じになっちゃった…
なぜか耳に母親の粘っこい鳴き声が聞こえた気がして、耳にイヤホンを押し込んだ。
大音量で、好きでもないうるさい音楽を流すと、少しだけ気が紛れた。


