「時間、本当に大丈夫?」
「平気平気。どうせ親なんか、帰ってこないし」
「…そう」
岡安先輩との関係は、何ら変わりはないまま続いている。
恋心は無い、身体だけの関係。
世間は汚れている…と、汚い…と、あたし達を軽蔑するだろう。
でも…
だから?
だから何?
汚れてようが腐ってようがあたし達はあたし達で、生きている。
精一杯生きている。
……そう、光梨が教えてくれた。
あたし…、光梨に支えられてばっかりだなあ。
「亜莉沙?」
「え?」
「送ってくよ」
そうだった。
ここは先輩ん家の玄関だった。
「いいよ、悪いし」
「そんなことないって!」
「いいってば」
「危ないじゃん!」
何を言っても引き下がらない先輩。
頑固だなあ。
誰がこんな頑固な人を“氷王”なんて名付けたんだろう。
あたしの言葉を頑なに拒む先輩にため息をつく。
「もう汚れてるから」
「……、…」
ほら、何も答えられない。
「…じゃね」
先輩が気まずそうに俯いた時に身を翻して、歩き出す。