「お前、三日も眠り続けてたんだよ。
具合悪いのに連れ出したりして、ごめんな…」
光梨はそう言いながらあたしを抱きしめた。
柔らかくあたしを包み込むように。
やっぱり光梨の腕の中は安心するなあ。
すりすりと逞しい胸板に頬をこすりつけた。
「…あたしのせいで……」
三日間眠りこけたせいで、頭に霧がかかったみたいにもやもやしている。
何も頭が働かない中で、自然とあたしの口からは言葉が漏れていた。
「ん?」
光梨は不思議そうな顔をして、あたしから体を離した。
綺麗な双眼に、泣きそうな少女が映り込む。
「あたしのせいで…また…、…人が傷付いた……」
「妃崎……」
「あたしが…あたしが居る、から…」
肉を引き裂く音。
飛び散る赤い液体。
何度も何度も、頭の中で繰り返される映像。
「やめて、やめて!もうやめてっ!!」
「妃崎!!」
光梨は、泣き叫ぶあたしをまた抱きしめた。
優しく背中をぽんぽん叩いてくれる。
まるで小さな子供をあやすように。
その規則的なリズムが、あたしのささくれ立った心を少しだけ、溶かしてくれた。


