「だ…っ!大丈夫ですかっ!?」
あたしの二メートルほど手前で倒れている金髪の男に駆け寄る。
側には一緒に居た茶髪の男も居る。
あまりの驚きにあたしは気分の悪さなんて忘れ去っていた。
「う゛ぅ…」
小さくうめき声を出す彼の右脇腹にはナイフがグサリと刺さっている。
べっとりと赤い液体が飛び散って地面に血だまりを作っていた。
周りに人だかりが出来て、あたしがぼーっとしている間に警察が駆け付けた。
金髪は救急車で運ばれていき、茶髪とあたしと、それから帰ってきた光梨とが警察に連れていかれた。
でも、警察に何を聞かれてもあたしは何も答えられなかった。
だって実際に何も分からなかったし。
何より、怖くて怖くて口が動かなかった。
この目で見た、肉を突き破る破壊力。
真っ赤な液体が、血が、頭の中にこびりついたように離れてくれない。


