「……ありがとう」

「あー、亜里沙。俺さ、ホンキだったよ」

「…?」

「お前のこと好きだった」

「…っ!?」


そのままにこりと微笑んであたし達に背を向けた。


「…あ」


振り向いた颯を不思議そうに眺めていると


「あの女は俺がなんとかするから」


そう言って伝票を掴むと去って行ってしまった。




鈴がなる。

扉が閉まる。


「「「「「ありがとうございましたー!!!」」」」」


威勢の良い声に送られた背中は心なしか清々しく見えた。




「…去り際カッコイイー」


あたしがポツリと漏らすと、バッと体が離される。


「え?」

「ごめん、俺めっちゃカッコ悪い」


そう言うと目をゴシゴシと手の甲で擦っている。


「目、痛くなるよ」


あたしがハンカチを差し出すと黙って受け取ってくれた。