「ーーー亜里沙…っ」
――刹那。
ぎゅっと強く抱きしめられた。
背中に彼の爪が食い込んで、顔をしかめるくらいに痛い。
今まで何度も抱きしめられてきたけど、これが一番痛いかもなあ……、なんて考えながらそっと背中に手を回した。
「俺…っ、怖かった怖かったんだ!付き合わなきゃ亜里沙を消す…って言われて、どうしたらいいかっ…わかんな…って…」
「うんうん」
楓はあたしの肩に頭を乗せて泣きじゃくる。
肩越しにじんわりと優しさが伝わって来る気がした。
「俺……っ、もうなっ…が正解かぁ、わかんなくっ…て、ありさ、守りたっ、て」
ああ、あたしって幸せものだなぁ。こんなにも愛をもらってる。
幸せを噛み締めていると
ーーパンパンパンパン…っ
キレのある音が聞こえて、楓の肩越しにちらりと見てみる。
颯が笑顔で拍手していた。
「おめでとう」


