もう少し、言い方ってもんがあったのかもしれない。


その時の俺は、亜里沙がバイトで俺の知らない男と仲良くしてる…って噂を聞いたばかりで、虫の居所が悪かったんだ。


「…あいつのせい、だよね?」

「ぁん?」


彼女の低くなった声に早く気付くべきだったのに。




「コイツ、…知ってるよね?」




「え?」


俺の目の前に突き出された写真は紛れもなく


「知ってるも何も…」


――俺の彼女の姿。


「何でこんな盗撮みたいな写真持ってんだよ!」


それは、バイト終わりに俺を待っている亜里沙の姿を影から撮ったであろうもの。




――バンッ…!


何も答えず不敵に笑う彼女に痺れを切らせてテーブルに手をたたき付けると、コップが揺れて少しだけ水が零れた。


妖艶なオーラに背筋を一本の冷たい筋が通る。


なんだ…、コイツ…。




さっきまで輝いていた“学園のアイドル”なんていう名声は見る影も無い。


荒んだ、濁った瞳が、ゆっくりと弧を描いて俺を映し出す。


その瞳に映っている俺の顔は恐怖に歪んでいた。