「…アリサ…?」
「…―っ」
格段に低くなった紗耶香の声に、一気に頭の熱が引いていく。
ヤバい。
取り返しのつかないことをしてしまったかもしれない、俺。
「紗耶香…っ、違うんだっ」
「妃崎亜里沙。6月27日生まれのB型。絶世の美少女だが中身はごく普通の女子大生。高校時代はヤリまん。兄の葉月は中二の時にたか…」
「止めてくれ…っ!!!」
狭い個室に俺の大声だけが響き渡る。
壁にかかった時計の秒針の動く音がやけに大きく聞こえた。
「あんたが、楓が、あたしだけを見るようにあの子と離れさせたのに…。なぜ?なぜ離れた今もあの子を思う?」
「違うんだっ!これはちょっとした…」
「ならば、“排除するのみ”」
ハイジョ…、スルノミ?
ハイジョ。
ハイジョ。
ハイジョ。
ハイジョサレル、アリサ。
「うわぁあぁああぁあぁあっ」
頭に血が上って何が何か右も左も分からなくて、
気付いたときにはもう遅くて
扉が閉まるパタン…って音だけがリアルで、スローモーションで動いて
あの時のことを思い出した――…


