「…遅かったわね」
「…これでもかなり走った方だけど」
「そう、シャワーでも浴びてきたら?」
そうする…と呟いて個室のユニットバスに向かう。
シャワーから出るほかほかと立つ湯気が少しだけ俺の心を溶かしてくれた。
ほんの少し、だが。
――…所は変わってここはある街中の一角。
夜になると危ないネオンが爛々と光り輝いて、カップルらしき奴らが次々と入り込む。
二人が同性だろうと、援交紛いのことをしようと、誰も咎めるものは居ない。
だから俺達も安心してここで会う。
時間も曜日も約束なんてこれといって一つもない。
紗耶香が人恋しくなったその時に俺を呼んで二人は躯を重ねる。
恋人でもない、ましてや友達でもない、友達以上恋人未満のそんな関係。
愛の無い…、醜い、関係。


