あいつを傷つけて、
あいつを泣かして、
あいつとの幸せな時間を手放したのは、
紛れも無い“俺”じゃないか。
あいつを幸せに出来るのは俺じゃない、他の“誰か”なのに。
何で、俺まだ…――
「楓ちゃーん!」
気付くと隣はさっきの女で、那智は向かい側で別の女と喋っていた。
うわ、うぜ…
思わず顔をしかめると
「もぅっ、楓ちゃんったらぁ」
…頬っぺたをつっついてきた。
「やだぁ、ぷにぷにぃ〜!ってか楓ちゃんめっちゃ良いにおーい!」
さらに、胸を無理矢理俺の腕に押し付けて擦り寄って来る。
果てしなくうぜぇ〜
前の俺ならヘラヘラにやにやしてたんだろうが、生憎亜里沙しか頭に無い俺には全く効かない。
コイツをジロリと睨みつけていると
〜〜♪〜♪♪
俺の携帯が鳴った。
電話だな。
ふと亜里沙とおそろいの着信音にしたことを思い出す。
まだあいつはこれなのかな…。


