この世界は嘘に塗れている。


嘘で出来ていると思うほどに真実の上に何十にも嘘が重ねられている。


でも、その何層もの嘘の下には必ず真実があるはずで。


あたしはその真実を見抜けるほどまだ大人じゃない。


真実を信じられるほど強くなれない。






「お前はアイツと俺を重ねて見てた。いい加減俺だけを見ろよ」






ダマされたダマされたダマされた……


“また”ダマされた。


皮肉に歪んだ端正な顔を前にしてもあたしはまだ真実を見出だせない。




「…嘘つき」




ぽつりと呟くと彼はひどく傷付いた顔になった。


自分だけ傷付いてるようなフリしてんの、あんたもアイツと一緒じゃん。




でも、あんたと過ごした日々はすごくすごく楽しかったよ。




たとえそれが嘘でも、偽りでも、あたしはきっとあんたに救われた。






「最初は利用してたのは確かだ。でも今はもう少し側に居たい」

「…嘘は、もう十分だから。バイバイ」


………優しい嘘なんか、イラナイ。




最低だけど、ありがとう…――















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「全部が嘘じゃないんだけどな…――」


その声があたしに届くことは無かったけれど。