「…ア…、イツ…って?」


やっと搾り出した声は小さく震えていた。




「俺さ、アイツと兄弟なんだ」




あたしの質問に答えることなく、颯はただ鐘を見つめて衝撃のカミングアウトをした。


「は?」

「腹違いのね」


あんぐり口を開けるあたしにいつもの笑顔を向ける颯。


でも心なしかその笑顔の下は泣いているような気がする。




「俺は、妾の子だったんだ」




あぁ、あたしの勘はやっぱり当たってしまう、こんな時に限って。

――…妾。


優しかった楓のお父さんは浮気をしていた。


その子供が颯だと言うのだ。


仲の良かった隣の家庭がガラガラと崩れていく。






『俺、父ちゃんみたいな男になる!!』

『だから待っててね、亜里沙ちゃん!!』






色褪せたセピア色の枠に囲まれた少年と少女は笑う、太陽の下で。

太陽よりも輝かしく。




誓いの鐘を鳴らす。