それでも、彼が憎くても、あたしは彼が大好きだから
彼の幸せを一番に願う。
誰の隣でもいい。
アイツが笑ってくれるなら。
この広い空の下、あたしと繋がる場所で笑っているのなら。
あたしは空を見上げて、あなたを探す。
夜になればきっと、いつもと変わらぬ場所で君が笑ってくれるから――…
「…今」
ぽつりと独り言のように颯がつぶやく。
「誰のこと…考えてた?」
「…ぇ」
彼の真剣な目があたしを捕える。
瞳の奥に宿った光がきらりと光った。
「…アイツ?」
…何言ってんの?知ってるはず無いのに。
アイツを、颯は知らないはず。
知ってるわけないのに…動悸が激しい。
ドックン…ドックン……
嫌な汗が流れ出す。
どうして?知らないはず、彼は知らないはず。
嫌な考えが頭を過ぎる。
まさか、まさか。
颯がそんなはずない。
彼は誰より優しくて、誰よりアイツに似てる…から……。