大きなドールハウスのような可愛い洋風の外装のカフェに入る。
奥で手を上げてても、イケメンは皆の視線を釘付けにしているからすぐ分かる。
「お待たせ」
「全然待ってないよ」
…相変わらず彼は優しい。
その優しさがこのあたしの奥底に潜む罪悪感を膨らませているのかもしれないけど。
「亜里沙ちゃん、何飲む?」
「コーヒー。那智君は?」
「俺も。ブラック二つ」
やたらと近くをうろうろしていた女の子に注文すると、はい只今!…と頬をピンクに染めて厨房に向かった。
「相変わらずモテモテねぇ」
「そんなこと無いよ」
「謙遜しちゃって〜」
今日は金曜日。
いつからだっただろう。
彼がこのカフェを教えてくれて、いつの間にか約束もしていないのに
週に一度、金曜日はこの店の一番奥があたし達の約束場所になっていた。
あたしを慰めるわけでも、同情するわけでもなく、那智君はただ傍に居てくれる。
それがすごく、心地好かった。


