「ってことで…」
『まじで颯君とやら、こんな時に…』
受話器の向こうから颯に対して怒っているここあの声が聞こえる。
あたし達は最近こまめに連絡を取り合ったりしていた。
そして今日も、あった出来事をここあに伝えていたのだ。
「心配してくれてありがとう」
『でも、メアドも交換しちゃったんだよね?』
「う…、ん…」
アイツを思い出してあたしが苦しいんじゃないかって、ここあが心配してくれている一方で
あまりにも会話が弾んだノリでメアドを交換してしまっていた。
『本当に大丈夫?』
「平気平気」
『何かあったら絶対言うのよ?』
「わかってるよー」
電話帳を開けば
未だに消せない、『光梨楓』という文字の次に並ぶ、
『佐渡颯』という名前が
私の中の何かを動かすキーになるとも知らずに――…。


