「いーなー、イチゴ」
「自分でブルーハワイ頼んだんじゃん」
隣であたしのかき氷を突こうとする彼の手を避けながら口に含むと、柔らかい氷がフワッと溶けた。
「でも〜そのかき氷、俺の金なんだけど?」
「勝手に奢ってくれたんじゃん。男がケチケチしないの」
横で頬を膨らます彼を見て思わず笑ってしまう。
……心の中で、だけど。
頬の筋肉は相変わらず強張ったままなんだけどね。
彼と居ると、アイツと居るみたいな錯覚に陥るんだ。
楽しくて、嬉しくて……それなのに、すごく。すごく。苦しい。
胸に支えたままやりようの無い想いがあたしの中に蓄積していく。
切ないような胸がきゅー…っと萎んでいくような感覚。
「そういえば」
「…ん?」
こっちを向いた彼の顔に思わず見とれてしまう。
カッコイイなぁ。
キリッとしてても大きな二重の目元。
高く、通った鼻筋。
小さな少し薄めの唇。
シャープな顎のライン。
喉仏がくっきり浮かぶ首筋に、
水がたっぷり注げそうな鎖骨。
それから…
「何?見とれてた?」
「なっ…」
図星なだけに柄にもなく照れてしまった。
「違うし!」
「で、なんか言いかけなかった?」
「あ、あぁ…」
「名前、何?」
「…は?」
「だから、名前」
聞こえなかったのかな?
観光客多いもんね。
それに、気付いてる?
さっきから半径三メートルの孤に女子の人垣が出来てること。


