「じゃあね」
「ぅん…、ありがとね」
彼女を駅まで見送ってから帰路を辿る。
今ここあは埼玉に住んでいるらしい。
わざわざ1時間ほどかけて来てもらったのかと思うと少し申し訳なく思う。
あたしが物思いに耽っているときだった。
__ドンッ
体に鈍い衝撃が走り、それによって体が傾く。
「…っと」
なんとか体制は立て直せたもののカバンの中身が辺りに散らばってしまった。
「すみません、ぼーっとしてたもので」
前の人も慌てて拾おうとしてしゃがみ込む。
…この声……似てる…
艶やかなよく通る声。
俯いていた視線を前に移した。
「……ぃえ、こちらこそ」
人違い。
離れた今もなおあたしは彼の面影を探してしまうんだ…――。
「あの…っ!メアド、教えてもらえませんか?」


