「所詮オトコは体だよね。あたしだって体目当てだったの?
…ま、良いけど」
あたし達の幸せな時間がガラガラと音を立てて崩れていく。
終わりって、こんなにも呆気ないもんなんだね。
「じゃあ…」
「……何?」
そこで楓が言葉を詰まらせた。
喉を鳴らしながら唾を飲み込むのが分かる。
「何で、待っててくれたの?こんな土砂降りの中、傘も差さずに」
そんなの期待してたからじゃん。
頭では楓はもう来ないんだって分かってたけど、心のどっかで期待してたんだよ。
あんたが来てくれるかもしれないって。
ふっ…と鼻から息が零れ出た。
「あー、やっぱ知らなかったんだ?」
楓を挑発するように見る。
あたしの腐った瞳には彼の輝く瞳が映る。
あたしがその光を消すんだと思うと少し胸の奥底がチクリと痛んだ。
「あたし、那智君と付き合ってるから」
「ぇ?」
「言えて清々したわー。あんたが浮気するよりずっと前から付き合ってたの」
「……那智、本当か?」
「……」
那智君は楓の言葉に返事をせず、ただぎゅっとあたしの震える肩を支えてくれた。
きっとあたしの精一杯の嘘を見破ってくれてたんだと思う。
那智君……ごめんね。
「本当よ。あたしがいつあんたをこんな時間まで待ってるって言った?那智君とデートしてたのよ」
「……っ」
あなたはこんな最低なあたしを
心の底から憎み、嫌い、
もう会いたくないと思うことだろう。
それでもあたしはあなたを
世界で一番恨んで、嫌って
世界で一番に愛し続けます――…


