「あたしに何が足りなかった?
楓のためにいっぱいいっぱい尽くしたつもりだった。
周りの献身的な女とは比べものにならないかもしれないけど…あれがあたしの精一杯だよ」
「俺はお前を心から愛…」
「いい加減にして。この期に及んでまだ言い逃れしようとしてるの?
…未練がましいんだよ。お前が浮気したくせに。
あんたなんて大っ嫌い…」
「……っ」
何も答えない楓に苛立ちを感じる。
濡れないようにあたしの肩を抱き寄せてくれる那智君の手だけが温かかった。
「あ………ああっ!あたしに足らないもの分かったよ!」
そう言ってケラケラ笑う。
今にも心と体が離れていっちゃいそう。
「躯。…そうでしょ?」


