ポツポツと音を立てながら地面に当たった雫が弾けた。
空が泣いている。
……これだから梅雨は嫌いなんだ。
道行く人々がこっちをチラチラ見ていたけれど、気づかないフリをした。
雨足が強まる中、一人佇む。
時間は刻々と過ぎていき、辺りはもう暗闇に呑まれつつあった。
「……」
ああ…あたし騙されたんだなって。
分かってたけど帰らなかったのはきっと、つまらない意地だったんじゃないかと思う。
気を張っておかないと今にも泣き崩れそうだったの。
でも。
いきなりあたしの周りの雨が止んだ。
辺りはまだザーザー降り続いているのに。
「風邪引くよ」
彼が呼びに来たりするから、こんな惨めなあたしに優しくしてくれたりするから。
「…頼まれたの?那智君」
「……帰るよ」
那智君はあたしの質問に答えないまま腕を引いて、座り込むあたしを引き上げた。
…ねぇ。
どうして目を逸らすの。
どうしてそんな悔しそうな顔をするの。
「……っ…」
あたしはその瞳に何かを悟ってしまった。
漠然とした〝何か〟を。
あえて表現するならば、これが終止符であり、決定打だったんだろう。
……あたし達の別れの合図。
頬を一筋流れた涙は雨にまみれて消えた。


